1963年、松竹大船、長谷川公之脚本、大槻義一監督作品。
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クリスマスを間近に控えたある日、自動車修理工の福本孝司(早川保)と関口美代子(倍賞千恵子)は、横浜のデートを楽しんだ後、修理工場の客の車に乗って帰っていた。
孝司は、自分が修理工場を持ったら、自分お車が持てると夢を語り、美代子は、造花のカトレアを、互いの胸につけて喜ぶ。
しばらくして、眠っていた美代子が目覚めると、見知らぬ場所に車が停まっており、孝司が真剣な顔で、君が欲しいと言い出す。
美代子は拒否するが、孝司は、僕たち結婚するんじゃないかと迫り、近くの宿に腰を落ち着けるが、やっぱり気持ちの整理がつかない美代子は、いきなり帰ると言い出し、宿を飛び出す。
孝司は、そんな美代子を追いかけ、車で送り届けると言いながら、遠慮する彼女のためにドアを開けるのだった。
早朝、戸山ケ原で女の死体が発見されたとの連絡を受けた七人の刑事たちが現場に到着する。
山さんこと杉山刑事(菅原謙二)は、死体の側に落ちていた造花のカトレアを発見する。
警官が言うには、6時45分頃、牛乳配達が発見したのだと言う。
死体には少し血痕が付着していた。
警官は、車を乗り入れ、そこから死体を引きずって来た跡があると、刑事たちを案内する。
その頃、美代子は、自宅で洗濯物を干していたが、化粧をしていた姉の佐代子(瞳麗子)が、夕べ遅くまで何をしていたのかとからかう。
弟で小学生の信一(市川好郎)は、そんな美代子に、デートに遅れるよと生意気なことを言う。
父親信夫(松村達雄)と母親加代(風見章子)は、佐代子の恋人はスポンサーで宣伝部長の中川と言う人物であり、美代子の恋人は、昔住んでいた上町で、隣にいた修理工の孝司らしいので、姉妹の差が開きすぎなければ良いのだがと心配し合っていた。
本部には、杉山刑事が戻って来て、タイヤから割り出した車の車種はフランス製のフロリードと言う、日本に15、6台しかない珍しいものだったと報告する。
それを聞いた赤木主任(堀雄二)は、被害者は推定24、5才で、死因は絞殺。暴行の気配はなかったと全員に発表する。
相当抵抗したらしく、爪の間からA型の血液が発見されたが、これは死体に付着していた血液型と同じだったと小西刑事(美川洋一郎)が報告する。
胃の内容物から、被害者は死ぬ前に餃子を食べており、深夜営業の店と言うと、新宿、池袋、高田馬場辺りの店ではないかと言う。
さらに、被害者の歯にはアマルガムが詰めてあることから、歯科医への手配も進めていると言う。
そこに、カトレアの造花の線を洗っていた南刑事(佐藤英夫)が戻って来て、これは量産品でとても後を追えないと言う。
修理工場で働いていた孝司に美代子から電話が入り、一昨日の事を詫びて来る。
その修理工場にやって来たのは沢田部長刑事(芦田伸介)らだった。
社長の野島(松本染升)に、フロリードの修理をやったそうだが、まさか、それを工員が勝手に乗り回すような事はないだろうねと質問する。
社長は否定するが、工員仲間は知っているらしく、沢田部長刑事が改めて聞くと、一昨日の土曜日の午後、遠乗りした奴がいると、福本孝司の事を教える。
さっそく、孝司に、土曜日の行動を沢田部長刑事が聞くと、横浜に行っていて、12時半頃戻って来たと言う。
手の傷はどうしたと聞くと、一昨日ですと言う。
横浜を出たのは何時だったと聞くと、10時過ぎ、それから第二京浜を通って、多摩川沿いを回り上の方へついたのが10時半頃だったと孝司は答える。
その時一緒だった関口美代子の名も明かす孝司。
本部に呼ばれた美代子は、土曜日の事を沢田部長刑事から話を聞かれる。
一方、グリーンのフロリードの持ち主の自宅に出向いた杉山、南両刑事は、出かける所だった婦人には相手にされず、残ったお手伝いに聞くと、いつも乗っているのは、お坊ちゃんの杉勝弘だそうだ。
土曜日の夜、多摩川沿いを曲がった辺りから帰宅するまでの時間が長過ぎるのではないかと再度質問を受けた孝司は、六本木でカレーを食ったと新たな証言をしたと赤木主任に報告した杉山刑事と南刑事は、ナイトクラブの「リド」と言う店に学生がいるらしいと教えられ、さっそく向かうのだった。
クリスマス間近と言うので、店内は踊りまくる人々であふれていた。
そこに杉勝弘(平尾昌章)がやって来たので、土曜日のアリバイを尋ねると、上原友子(富士真奈美)と一晩中裏のホテルで一緒で、車はロックして、この前に停めておいたと言う。
店を出た杉山刑事は、ちゃっかり、杉が吸っていた煙草の吸い殻を手に入れていた。血液型を調べるためであった。
美代子の姉の佐代子は、ファッションモデルだった。
ちょうど撮影中の佐代子を尋ねた小西刑事らは、彼女が孝司をあまり好いていないらしい事、土曜日の夜、何かトラブルがあったらしい事などを聞くが、宣伝部長の中川(高宮敬二)は、刑事が来た事を露骨に迷惑がる。
本部では、杉山刑事が手に入れたタバコから採取された杉の血液型はシロだった事が分かり、南刑事は、孝司の血液型を調べようかと主任に問う。
孝司は、茶店で美代子と会っていた。
二人とも、刑事が来た事で戸惑っていた。
本部では、南刑事が、孝司の血液型はAだったと報告する。
いよいよ孝司の嫌疑が濃厚になったが、一人、中島刑事だけは、本当にやったのかね?と納得出来ない様子だった。
杉山刑事は、まだ見つかっていない餃子屋の事を指摘し、赤木主任も、今集まっている証拠だけでは令状は取れんと言う。
その夜、帰宅して来た佐代子は、親たちの前で刑事が来たことを打ち明け、あなたのおかげで、私めちゃめちゃになるわと、美代子に詰め寄り、口喧嘩になったので、父親が叱りつける。
翌日、孝司を呼び出した美代子は、事件には本当に関係ないのねと確認するが、孝司は、君は僕の事を信じていないんだ。あの晩だって…とすねる。
美代子はその後、新聞記者の田所(園井啓介)なる人物から、犯人は別の方向にいると声をかけられる。
その際、田所の方は、美代子の胸に飾られたカトレアの造花に注目する。
久保田刑事(天田俊明)と小西刑事は、被害者が最後に立ち寄った餃子屋(中村晃子)を発見していた。
本部に突然やって来た田所は、美代子の胸についていた造花の事を教える。
さっそく、関口家に向かった南刑事と沢田部長刑事は、佐代子から、美代子の造花を預って帰る。
本部では、これで証拠が全部そろったと喜びの声があがる一方、中島刑事だけは、やはり疑問が拭いきれないようだった。
赤木主任は、明日、孝司で出頭させようと決断する。
そこに、千葉県警から電話が入り、被害者の身元が鈴木ヨシエと言う女性であると分かったとの連絡がある。
再び、中島刑事と共に修理工場を訪れた沢田部長刑事は、孝司に同行を求める。
本部で、赤木主任から、土曜日の行動について再度確認された孝司は、0時10分頃、柳橋の料亭から、政民党の代議士海老原喜一郎が出て来るのを見かけたと答える。
亡くなった父親と知り合いだった人だと言うのだ。
その後のアリバイと言えば、寝ようと思って床に入った直後、間違い電話がかかって来ただけだと言う。
海老原の自宅を訪れて土曜日の行動を確認した刑事たちだったが、出て来た秘書は、ずっと在宅だったと答え、電話で旅行中の海老原本人に確認しても同様の答えしか返って来なかった。
新宿で、餃子を食べたのではないかと沢田部長刑事が確認するが、孝司は、そんなものは食べない。自分はニンニクが嫌いなのでと否定する。
千葉の鈴木ヨシエの母親に会に行った沢田部長刑事と小西刑事は、兄嫁(村上記代)から、ヨシエは上野辺りに住んでいたらしいとの情報を得る。
一方、美代子を呼び出した田所は、孝司が本部に連れて行かれた事を教え、土曜日の夜10時から11時半までのアリバイを再確認するが、美代子は、車を停めて休んでいただけだと押し通すのだった。
本部では、海老原本人からも、柳橋の料亭からも、土曜日にいたと言う証言を得られなかったが、取りあえず、孝司を泳がせてみようと言う事になる。
本部を出た孝司に、待ち受けていた田所が、美代子が待っていると声をかける。
茶店で待っていた美代子は、田所は自分たちの味方なのだと説明する。
誰かに観られているみたいだと店を出た孝司は、銀座からの地下鉄に美代子を乗せ、渋谷まで送って行くと言うが、しっかり南刑事、中島刑事たちが尾行していた。
途中で降りようと言い出した美代子は、孝司さんにみんなあげる。私、信じているんですもの…と言い出す。しかし孝司は、美代ちゃん、帰ろうと優しくいたわるのだった。
一方、杉山刑事と小西刑事は、被害者ヨシエの住居を求めて麻布近辺を探しまわっていた。
ようやく、ヨシエの住居を見つけた二人だったが、金本と言う男がやって来て、月曜日に引っ越して行ったと言う。
その報告を受けた本部では、その金本と言うのは、通称ゲンちゃんと言う男で、ヨシエのヒモだったのではないかと推測する。
つまり、ヨシエは、六本木界隈で売春関係の仕事をしていたと言う事だ。
小西刑事は、金本の写真を持って餃子屋に出向くが、女店員は知らないと言う。
その頃、佐代子は、中川に呼び出され、妹美代子が関係したコールガール事件に絡み、自分たちの事まで新聞記事になっている事を叱られる。
その日帰宅した佐代子は逆上して、美代子や父親までののしり、父親から頬を叩かれるのだった。
杉山刑事らと六本木にやって来た久保田刑事は、「今晩おひま 朱実」と書かれたコールガールのチラシを見つけ、これを利用しようと言い出す。
久保田が客を装い呼び出した朱実(富永美沙子)は、ヨシエや金本の事を知っているようだった。
口が固い朱実だったが、久保田刑事が警察手帳を取り出し、刑事たちに取り囲まれ、二人の住いを聞かれると、リュウトマンションだと教えるしかなかった。
しかし、そこには金本は戻っていない様子。
沢田部長刑事は、その後も、修理工場を張っていた。
その後、ようやく本部に連れて来られた金本(清村耕次)は、土曜日の夜11時半頃、「ツイスト」と言う終夜バーの近くで、客を掴まえたヨシエが、派手な外車に乗り込む姿をちらりと見たと証言する。
その車とは、フロリードの事かと写真を見せると、そうだと言う。
修理工場で同僚や社長から白い目で見られるようになった孝司h、会社を辞める決意をする。
部品室に私物を置きに行った孝司は、そこにあった強青酸ソーダの瓶に目を留める。
会社を出ようとした孝司は、女子事務員から、美代子から2時にいつもの所で待っていると電話があったと知らせられる。
いつもの茶店には美代子と田所が待っていた。
会社を辞めたと聞いた田所は、自分のアパートに来いと薦め、ここは刑事が張っているから出ようと言う。
茶店を出た美代子は、弟が欲しがっていた手袋に目を留める。
本部には、孝司を張っていた久保田刑事から巻かれたと報告が入る。
赤木主任は、孝司は有力だと口にする。
そこへ、修理工場の社長野島から電話が入り、自分がいない間に勝手に孝司が出て行ったので、戻って来るように伝えてくれと言う。
沢田部長刑事は、田所の住所を調べ電話をしてみるが、出て来たのはアパートの女性で、取材本部の方にいるのではないかと言う。
しかし、その女性は、アパートに連れて来られた孝司と美代子を、しっかり見ていてくれと、田所から頼まれていたのだった。
やがて、田所本人が本部にやって来て、ネタを教えてくれと言う。
田所のアパートに潜んでいた孝司は、タバコを吸おうとして、そのセロファンに差し込んでいた紙包みを見つけ、慌てて隠そうとするが、美代子から見せろと迫られ差し出す。
それが青酸ソーダの粉末だと知った美代子は、孝司を責めるが、その時、ドアをノックする音がしたので出てみると、そこには南刑事と杉山刑事が来ており、警視庁まで来るように孝司に伝える。
田所の姿もあったので、美代子は訳を尋ねるが、田所も最初から孝司が臭いと睨んでいたと聞くと、愕然とする。
アパートで横になる田所の側で、美代子がまんじりともせず起きて待っていた。
警視庁の取調室では、南刑事が、造花はどうしたと聞いていた。
孝司は、ヨシエが取ったと言う。
その後も返してくれなくて、後ろ髪に刺して去って行ったと言う。
バー「ツイスト」にいた金本に確認しに行くと、確かに、客を取ったヨシエが外車に乗り込む際、後ろ髪に造花をつけていたと思い出す。
ヨシエは左側のドアから乗り込んだと言うので、その外車は右ハンドルだったらしいと気づいた中島刑事と杉山刑事は、ナイトクラブの「リド」の前に停めてあった杉のフロリードが右ハンドルである事を確認する。
さっそく店の中に入り、杉の姿を捜すが、ちょっと席を外しているが、コートが残っているので直戻って来るはずだとウエイターは言う。
朝になったので、部屋を出ようとした美代子に気づいた田所は、恨んでいるだろうね。好き好んでやった訳じゃないのだと弁解する。
美代子は、豪徳寺の駅で電車に乗る。
ナイトクラブ「リド」で待っていた杉山刑事らの元に、ようやく杉が戻って来る。
車の事を聞くと、あいつがリード線を勝手につないで乗って行ったんだと言い出す杉。
その男とは、友子の事でもめていた児玉良平で、最近、学校でもここでも姿を見ないと言う。
そこに友子がやって来て、今日11時に渋谷のハチ公前に20万持って来いと児玉から連絡があったのだと言う。
その児玉の特長を聞くと、友子は左利きだと言う。
さっそく、餃子屋の女の子に確認しに行くと、確かにヨシエと一緒に来た客は左利きだったと言うではないか。
美代子は、警視庁の前に来ていた。
海老原喜一郎(佐々木孝丸)に直接会いに行った赤木主任は、福本君の人権に関わる事なので、押してお伺いをしたと切り出し、土曜日の夜の事を改めて聞く。
車の中に招き入れた海老原は、政治家には口に出して言えない事があると、暗に、柳橋の料亭にいた事を認める発言をする。
美代子は、弟、進一が遊んでいた小学校に来ると、プレゼントの手袋を渡し、元気でねと言い残すと、その場からタクシーで去って行く。
本部に戻って来た赤木主任は、孝司のアリバイが成立したと全員に伝える。
そこへ、美代子の母親から、美代子が失踪したと捜査届けが出されたと言う連絡が入る。
それを知った孝司は、みんなあんたたちのせいだ。彼女は青酸ソーダを持っているので死ぬかも知れないと慌てだす。
友子が待ち受けるハチ公前には、刑事たちが張り込んでいた。
一方、杉山刑事は、司令室に張り付き、美代子の行方を知らせる通報を待ち受けていた。
ハチ公前に児玉良平(椎名勝己)が姿を現し友子に接触したので、刑事たちは一斉に飛びかかって確保する。
駅前交番に連れ込んだ児玉は、殺すつもりはなかったんだと泣き崩れる。
司令室には、美代子らしき女性を乗せたタクシーは、二子多摩川の土手を上流に向かったと知らせが入る。
すぐさま、南刑事と孝司を伴い、杉山刑事はその場所へ急行する。
土曜日、孝司に連れて来られた宿に一人来ていた美代子は、手帳に遺書をしたためていた。
近所に到着したパトカーから降り立った孝司は、こっちかもと言い、あの宿の中に入り込む。
美代子は、部屋に入って来た孝司の姿を見て呆然とする。
孝司は、自分への嫌疑は晴れたんだと言う。
二人は固く抱きしめ合うのだった。
宿を出た二人を、送って行こうと、杉山刑事がパトカーに乗せようとするが、二人は断り、そのまま土手を歩き始めるのだった。
▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼
TBSの人気刑事ドラマの映画化で、有名なテーマソングや七人の刑事のキャストはテレビ版と同じである。
松竹映画と言う事もあって、倍賞千恵子が苦悩する主役のような作りになっている。
また、同じく当時、NHKの人気ドラマだった「事件記者」の園井啓介がゲスト出演しているのも見所。
しかし、この園井啓介扮する事件記者が、途中までは、事件解決に役立つ好人物のように見えるのに、最後には、美代子たちを利用していただけの嫌な人物のように見えるのが残念。
若き平尾昌章、富士真奈美、中村晃子らの姿が貴重。
特に中村晃子は、歌手として人気者になる前の少女時代であるにも関わらず、かなり何度も登場し、開けっぴろげなキャラクターとして目立っている。
今のドラマの映画化のように、特に派手な作り方にはなっておらず、地味と言えば地味な印象なのだが、現役時代の懐かしい顔ぶれを観るだけでも、往年のファンには感激ものではないだろうか。